社名の元となっている猿田彦大神は、弊社近隣の伊勢国一宮椿大神社様の主祭神であり”みちひらきの神”として有名で、未開の地を切り開き天つ神を先達したとされています。
創業当時「今後の日本の農業には無限の可能性がある・・・!」そんな期待だけで事業をスタートしました。農業に関する様々な書籍や動画を見漁り、栽培方法、売り方、農業界の光と闇等など、とにかく情報を集めて事業の準備をしました。
そして楽観的に「猿田彦大神にあやかって農業界を導く会社にするぞ!!」と息巻いていたのです。

しかし、言うは易く行うは難し。いざ鈴鹿の中山間地に拠点を構え農業を開始してみると未知の逆風が立ちはだかりました。
用地の取得、高額な資材・機材の購入、山間地まで出勤してくれる人材の確保、地域の方々との人間関係、生産物の販路、獣害、そして人間の力ではどうにもならない厳しい自然環境と土壌・・・一つとしてスムーズに行くことはありませんでした。
農業界を導くどころか、かつて読み漁った書籍に書かれていた「一般的な農業者の姿」にも程遠い、勢いだけの一発屋芸人のような状態。
一般的にスーパーに陳列されている野菜やお米がどれだけ緻密な管理技術によって生み出されているのか。そしてなぜこの安さで売られているのか・・・。
今まで私が関わってきた仕事の中でも最も不確定な要素が多く、かつ全てにおいて結果が見えるまでに時間がかかります。

しかし、失敗の連続の中でもわかってきた肌感覚がいくつかありました。
一番大きな体験だったのは農産物が獣害により収穫できず、地域にあるものを集めてきて来客をおもてなししたことです。
自然環境そのものを味わい、その地域で出来たものをその場で味わい、私たちの精一杯のおもてなしの姿を味わってもらい、とても喜んでいただいた体験。
これによって私たちは農産物を提供することだけではなく、成功も失敗も含めた農的体験を提供することが唯一残された道だと感じ、今歩みを進めています。

私たちは農的ライフスタイルの提案者でありたいと思います。
まずはご来園頂く皆様に先駆けて私たちがたくさんの農的失敗体験を重ね、皆様に体験いただきたいものを吟味しています。

これから私たちの事業を運営していくにあたり、今までの失敗を元に以下の三つを弊社の方針としました。
◎ 私たちは健全な農に携わることを通じて人間的に成長し、その人らしさを発揮して生きられる場をつくり、継続する。
◎ 私たちの行動や立ち振舞・圃場・施設・倉庫・トイレに至るまで、そのまま来園者の体験となる。
 私たちにバックヤードはない。
 すべてをさらけ出した環境そのものが私たちの商品であり、整った環境で美しい想い出を提供する。
◎ 私たちは余所者である。
 地域の人々とのコミュニケーションを大切にし、理解されるように務める。
 賛同する人々とともに打たれない高さまで突き抜けた杭となり、巻き込み、自然と共に地域が変わってゆく。

今は弱々しい一本の苗木ですが、自然環境とそこに営む人々と共に着実に歩みを進め、いつか大きな森になれたらと願っています。

皆様のご来園をお待ちしております。